Khanal Dinesh

築地もったいないプロジェクト 魚治

Khanal Dinesh
(カナル・ディネス)

アルバイトを機にMUGENに入社。元銀行員から飲食人への転身ストーリー。

1989年、ネパール生まれ。元銀行員。2015年、日本語学生時代に「なかめのてっぺん渋谷宇田川町」のアルバイトを経験。専門学校を卒業後、2018年にMUGENに入社する。料理未経験からスタートし、現在は「築地もったいないプロジェクト 魚治」のキッチンにて腕を振るう。日本語、英語、ネパール語、ヒンディー語、アラビア語、韓国語が話せる。モットーは「明るく笑顔 日本一」

インタビュー

元銀行員。日本の銀行に就職するために来日した。

私はネパールの中部、シャンジャー郡と呼ばれる田舎町で生まれました。仏教の開祖である釈迦の生誕地は、ネパールのルンビニと呼ばれるインドに近い村とされていますが、私の故郷はその近くにあります。ヒマラヤの山々に囲まれ、標高が高く、自然の豊かな地域です。実家には畑があり、米や野菜を作っていました。
私は4人兄妹の次男。兄と2人の妹がいます。私以外の家族は全員ネパールに住んでおり、兄は銀行に勤めています。
来日以前は、私自身も銀行で働いていました。ドバイの銀行に駐在が決まり、ネパールの大学を中退して働いていました。当時は銀行員として、より高収入が期待できる国で働きたいと考えていました。そこで候補に挙がった国が日本です。世界で最も安全な国であることも、渡航先を選ぶうえで魅力の一つでした。
2015年、私は27歳で日本に留学しました。日本の銀行への就職を志し、まずは日本語学校に通ったのです。

すべては「なかめのてっぺん」のアルバイトから始まった。

MUGENとのご縁は、「なかめのてっぺん渋谷宇田川町」のアルバイトから始まりました。日本語学校に通い始めた頃、私はバイト先を探していました。その際に、友人がネットで見つけた広告が、たまたま宇田川町店の求人だったのです。ちなみに当時の私の日本語レベルは、かなり低い状態でした。いま思えば、そんな私をよくも採用してくれたものです。

言葉は通じない、右も左もわからない…。戸惑いながら現場に入った私に、宇田川町のメンバーは非常に親切に接してくれました。たとえば、私に理解できない日本語があれば、その都度スマホの翻訳機能を使って、忙しいなかでも丁寧に意味を教えてくれたのです。私はメンバーの優しさに、心から感動していました。もしも銀行に就職できなかったら、そのときは是非この店舗に戻ってきたい。彼らと一緒なら、日本で安心して働けそうだ…。アルバイトの時代から、私は密かにそう思っていました。宇田川町店のメンバーには、私が日本語学校を卒業するまでの約1年2ヵ月間、本当にお世話になりました。

それから2年間、私は静岡にある専門学校に入学し、国際ビジネスを学びました。その間に挑戦した日本語能力試験では、残念ながら1級の合格が叶いませんでした。1級に不合格の場合、日本の銀行への就職は困難になります。理想の進路は諦めるしかないか…。厳しい現実に直面したとき、ふと私の心に宇田川町店のメンバーの顔が思い浮かびました。そうだ、再びあの場所に戻ることはできるだろうか…?卒業が間近に迫った頃、私は当時の店長に連絡を取り、MUGENへの入社意思を伝えました。

実は当時、既に大手キャリアからの内定があり、ケータイショップの正社員になる選択肢もありました。その会社の給与や待遇は、MUGENとほぼ同等でした。一方で私の脳裏には、「なかめのてっぺん」の活気に満ちた雰囲気と、仲間と楽しく働いた記憶が鮮明に残っており、心が強く惹かれていました。就職先を選ぶうえで、社風や職場環境、社長や同僚を知っていると安心感があります。だからこそ、私はMUGENを志望したのです。2018年、今度は正社員として、私はMUGENに戻ることができました。

料理未経験から、丸の内の居酒屋業態に飛び込む。

入社後は、「なかめのてっぺん丸の内店」に配属となりました。料理については、100%未経験からのスタートです。宇田川町店のバイト時代に私が経験したのは、ドリ場や洗い場など、調理にほとんど関わらない業務でした。まずは「出汁巻き卵」をマスターするまで、かなりの練習が必要でしたね。ネパールにも卵焼きはありますが、日本のそれとはスタイルが異なります。いわゆる日本風(半熟の状態)で完璧に巻けるようになるまで、たくさんの卵を使いました(笑)

丸の内店のランチタイムには、常に100名以上のお客様がお越しになります。初日は洗い場に入りましたが、あまりの忙しさに目が回るほどでした。それでもなんとか2日でマスターすると、すぐにキッチンに入れてもらえました。任されたのは、生姜焼きや鯖味噌などを、定食のお膳に盛り付けていく仕事です。1週間が過ぎる頃には、それも1人で対応できるようになりました。

こんな感じで、入社当初は調理のサポート業務からスタートした私ですが、今では店舗のキッチン業務において、出来ないことは何一つありません。魚も下ろせるし、炉端も1人で回せるようになりました。ちなみに当時の丸の内店には、既にネパール人の先輩(ディネスさん)が働いていました。同郷の彼は、私にとって安心できる相手だと思ったら、実は現場の誰よりも厳しい先輩で思わず面食らいました…(笑)

元銀行員の自分が、飲食業の魅力に目覚めた!

私は現在、有楽町にある居酒屋「築地もったいないプロジェクト 魚治」にて、主にキッチン業務を担っています。

魚治(うおはる)は、築地市場(現在の豊洲市場)で日常的に生まれる「もったいない食材」をメインに扱っている業態です。たとえば、「サイズが不揃い(規格外)」「キズがついている」「足や鱗が取れてしまった」などの理由で買い手がつかなかった市場の商品は、行き先がないために廃棄されてしまう運命にあります。鮮度には何ら問題がないのに、これは非常に「もったいない」ことです。魚治では、そのような「もったいない食材」にあえて光を当て、それらを美味しく調理することはもちろん、お客様に提供する際に「もったいない理由」を丁寧にお伝えしています。

漁師さんや市場で働く人々、お客様、そして私たち店舗、関わるすべての人々の喜びを生み出せるイノベーティブな業態は、他の飲食店では見られない非常にユニークなものです。このような価値ある取り組みに携わる機会が得られて、私は非常に幸運でした。当初は日本の銀行で働くために来日した私ですが、MUGENに入社したことで、飲食業の魅力に気づくことができました。今となっては、むしろ飲食業を極めたいと思っています。

銀行員の仕事は、基本的にはルーティンワークです。新たな学びや刺激に乏しく、いったん仕事に慣れてしまえば、あとは同じことの繰り返しです。一方で、私にとっての仕事のやり甲斐は、新たなチャレンジができることにあります。その点、飲食店の毎日には、常に変化があります。特に魚治にはメニューが存在せず、その日に市場から納品された「もったいない食材」を見て、お客様にどのように提供するのかを自分たちで考えるのです。もちろん、「お金を稼ぐ」という一点だけを求めるのであれば、金融業のほうが効率的でしょう。体力的な面においても、居酒屋の業務のほうが大変ですからね。しかし、私が仕事において重視するのは「お金」だけではありません。新しい学びや経験から得られる刺激、自分の成長を感じられる環境ほどエキサイティングなものはないのです。故郷のネパールには、このようなチャレンジングな仕事は存在しません。そもそも日本とは労働観が異なり、一般的に自己成長を求めるようなマインドもありません。せっかく日本に来たからには、私は今後も貪欲にチャレンジを続けていきたい…。まだ見ぬ自分の成長や、未知の体験を望んでいるのです。

現時点では5年後を念頭に、日本で自分の飲食店を開きたいと考えています。せっかく日本の言語や文化に親しみ、長い時間をかけて飲食業の経験を積んできたのです。人生をより豊かに発展させていくためには、MUGENでゼロから身につけた知識やスキル、経験を活かさない手はないでしょう。店舗を経営する立場になれば、売上管理や人材のマネジメント、集客や接客など、新たな経験がたくさん待っているはずです。ちなみに私が飲食店をやるなら、もちろんネパールカレーのレストランではなく、MUGENスタイルの居酒屋ですよ(笑)丸一匹の新鮮な魚が食べられて、お客様から愛されるような活気に満ちた居酒屋をイメージしています。とはいえ、これはまだ構想段階です。実際には5年後も、変わらずMUGENにお世話になっているかもしれません。

社歴も雇用形態も関係なし!超フラットな社風がMUGENの魅力。

MUGENに入社して良かったことはたくさんあります。そのなかでも、良き仲間と共に働けていることが、私にとっては何よりの幸せです。MUGENのみんなは、入社当初の未熟な私を温かく迎えてくれ、仕事を丁寧に教えてくれました。日本人のなかでも、特に明るく元気で、仕事に対して前向きな人たちが集まっている組織だと感じます。お客様を喜ばせることが自分たちの喜び…そんな価値観を共有できる仲間が働く現場には活気があり、非常に清々しいものです。また、関わるすべての人に対してフラットな社風も、他社にはない魅力だと思います。

私は静岡の専門学生時代に、大手居酒屋チェーンでアルバイトをしていました。そこでは私が店舗の運営に意見することや、自分のスキルアップを目指すことなど、プラスアルファの行動は求められていませんでした。私たちアルバイトに期待されていたのは、決められた時間、ひたすら指示通りの作業をこなすことだけ。会社や店舗、仕事について、深く知る機会はありませんでした。

一方でMUGENは、国籍や社歴、雇用形態をはじめ、どんなプロフィールのメンバーに対しても壁がありません。現場に入った瞬間から、会社や店舗が大切にする文化やルールを共有され、誰もが店舗のあらゆる業務に習熟することが求められます。それは、一人ひとりのメンバーの存在を、会社や店舗を構成する重要な一員として迎えているからです。だからこそ、MUGENでは積極的な姿勢は大いに歓迎されます。スキルや経験の有無は関係ありません。自ら手を挙げれば、何事にもチャレンジできる環境があるのです。毎年開催される年始の総会では、社員はもちろん、キャストやパートナー企業様を一堂に招き、年度の方針や業績、出店計画にわたるまで、すべての情報を公開しています。

私のような外国人が、MUGENのようなオープンかつフレンドリーな会社に巡り合えたことは奇跡に近い幸運です。この恵まれた環境を活かして、どのレベルの飲食人を目指すのか…。すべては自分次第ですよね。私は今、自分が「内山さんの会社」で働いているとは思っていません。むしろ「自分の会社」だという意識で仕事をしているつもりです。もしも自分が社長だったら、いい加減な仕事は絶対にしないし、逃げるという選択肢はありませんよね。今から約7年前、私は夢を目指して日本にやってきました。そして5年前、銀行員のキャリアを捨てて飲食の世界に飛び込んだのです。現時点で、ネパールに帰国することは考えていません(故郷の両親には毎月10万円の仕送りをしています)。私は今後も日本にしっかりと根を張り、仲間をつくり、自ら選んだ飲食の道をさらに極めていきたい…。MUGENで培ってきた知識や経験を活かして、これからもっと飛躍していきたいと考えています。

現在、妻のディパも「なかめのてっぺん本店」で働いています。彼女も2018年に正社員として迎えていただきました。娘(エリカ)の誕生を機に、現在は週末限定のキャストとして働いています。妻が出勤する週末は、私の勤務先の魚治が定休日のため、私が子育てを担当しています。有難いことに、会社に働き方を融通いただいたおかげで、私たち夫婦は協力しながら子育てが出来ています。また、今年の9月末には1ヵ月弱の休暇をいただき、数年ぶりにネパールに帰国できることになりました。家族全員、今から非常に楽しみにしています。故郷に帰って完全にリフレッシュしたら、一段とパワーアップした自分で現場に戻ってきたいと思います!

※MUGENでは、社長は肩書きではなく名前で呼ばれています。

築地もったいないプロジェクト 魚治

住所 〒100-0005
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビルB1
電話番号 03-6273-4901
営業時間 ・月曜日~金曜日
ランチ 11:00~14:30
ディナー 17:30~23:30(L.O.23:00)
・土曜日
16:00~22:00(L.O.21:30)
定休日 日曜日・祝日
座席数 64席
HP 築地もったいないプロジェクト 魚治

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